個人民事再生と書式の書き方

再生手続開始申立書類を知っておこう

個人民事再生を申し立てる裁判所は、債務者が事業者である場合は、主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所、債務者が事業者でない場合は、債務者の住所地を管轄する地方裁判所になります。

申立ての際には、いくつかの必要書類がありますが、裁判所には、申立書類のひな型が置かれているので、それを利用することをお勧めします。

なお、個人民事再生の手続開始の申立書には、大きく分けて、最高裁書式、東京地裁書式、大阪地裁書式の3種類があります。
どの方式を使えばよいか、申立前に管轄裁判所に確認することをおすすめします。

まずは債務の内容を整理する

まずしておくべきことは、自分の借金の実態を正確に把握することです。
それには、債権者の一覧表を作っておくことです。
最初は自分なりの表を作ってもよいのですが、どうせなら最初から裁判所に提出する方式の債権者一覧表を作っておけば、後々便利といえるでしょう。

個人民事再生では、債務者が作成した債権者一覧表は債権者に送られた後、債権者が特に債権届をしなければ一覧表い記載した額が債権額となり、債権者一覧表の債権額に異議があれば債権者は債権届をしなければならないという特徴があります。
ですから、債権者一覧表を作成することは、借金の把握に大変役立つものとなります。

債権者一覧表には、債権者の住所、氏名(名称)、電話番号、FAX番号、債権額、当初の契約年月日、契約の種別などを記載しますので、これらの事項を整理しておきましょう。
債権者の名称については、「(株)◯◯」あるいは「◯◯(株)」などと正確な名称を記載しなければなりません。
会社名よりもブランド名のほうが有名な会社の場合には注意が必要です。

また、個人営業の貸金業者で商号や通称を用いている場合、「◯◯こと山田太郎」というような書き方をします。
債権者の住所、電話番号、FAX番号については、通常、貸金業者の場合、自分の取引支店や担当部署の住所や電話番号などを記載しますので、現在、どこが自分の担当部署とないっているかなどを調べておく必要があります。

債権額については、最新の取引明細書兼領収書やクレジットカードの請求書などを見て把握します。
約定利率が利息制限法の制限利率を超える場合は、引直し計算をして求めます。

なお、多くの場合、引直し計算をするには債権者に取引履歴の明細を請求するしかありません、債務額がよくわからない場合、債権者に確認するしかないこともあります。

当初の契約年月日・契約の種別は、お金を借りたのであれば、「平成◯年◯月◯日金銭借入れ」などと記載し、クレジットカードでショッピングしたのであれば、「平成◯年◯月◯日立替払い」などと記載します。
最初の契約年月日は、通常、覚えていないことが多いでしょう。
その場合は、契約書などを探すか銀行預金通帳、預金の取引明細書などを参照して確認します。
これらの方法でわからない場合には、債権者に聞くという方法をとらざるを得ないこともあるでしょう。

債権ごとに分けて書く

ひとつの会社に貸金債務を負っていると同時に、ショッピングの立替金債務を負っていることはよくあります。
この場合、債務者一覧表には貸金債務と立替金債務の金額を合計して記載するのではなく、債権ごとに記載する必要があります。
つまり貸金債務について現在額と発生原因などを書き、立替金債務については別の欄に現在額と発生原因などを書くのです。

債務者が作成した債権者一覧表に記載の現在額に対して債権者に異議がある場合、債権者は裁判所に債権届をしてきます。
このとき多くの場合、利息や遅延損害金についての主張をしてきます。
貸金債権と立替債権では通常、利息や遅延損害金の利率が異なりますので、債権者一覧表に別々に記載しておけば、債権者は「債権番号何番の債権に対してこういう利息や遅延損害金をつける」ということを明確にしやすくなりますし、債務者側も「債権者がどの債務についていくらの利息・遅延損害金を主張しており、それが自分の計算と合っている、あるいは違う」ということをチェックしやすくなります。

また、貸金債権が複数ある場合、それぞれ別に記載したほうがいいでしょう。
通常、発生原因(特に当初の契約日)が異なっていることが多いでしょうし、遅延損害金の発生時期も異なったりするからです。

元金だけの額を書くのがおすすめ

債権者一覧表の「現在額」とは文字通どおり、現在の債権額です。
これは厳密にいえば、元金に申立時までの利息や遅延損害金を含めた額を書くべきといえますが、実際問題としてこれはなかなか難しいことがあります。
というのは、どの時点まで通常の利息を付加し、どの時点から遅延損害金を付加するかということや、遅延損害金の利率をどうするか、といったことなどは、債権者からかなり詳しい資料を出してもらったり、債権者に問い合わせたりしなければならないことが多いからです。
もちろん、こうした作業を行って、申立時点までの利息や遅延損害金を加えた額を現在額として記載する方法もありますが、それよりも現在額に元金の額を記載するという方法をとったほうが、申立時の労力を省くことができます。

現在額に元金のみを記載した場合、債権者が債権届をしなければ、その額を債権として届け出たことになります。
債権者が債権者一覧表に記載された現在額に異議がある場合、債権者は利息・遅延損害金を加えた額を届出、その際、通常その根拠となる計算書や資料を添付します。
債権者としては、それらの計算書や資料などを検討して、利息や遅延損害金が納得できるのであれば、それを認め、納得できない場合には異議申述すればよいということになります。

異議の保留をしておく

債権者一覧表には、「異議の保留欄」というものがあります。
この欄の「あり」にチェックを入れたり、◯印をつけておくことで、自分で債権者一覧表に記載した現在額に後で異議を申し立てることができます。

債権者がわざわざ債権届をしたり、債権がない旨の申し出をしなければ、債権者一覧表に記載された現在額が債権額となります。
しかし、よく調べて書いたとしても現在額が間違っていることがあります。
誤記もあるでしょうし、引直し計算が間違っていることもあります。

また、債権者の協力を得られないために推定で現在額を書くこともあります。
現在額が実際の債権額よりも少なければよいのですが、実際の債務額より多かった場合、異議の保留をしておかなければその額を債権額として認めざるを得なくなります。

このような場合、債権者一覧表に異議の保留をしておくことによって、後で債権額について異議の申述をすることができるのです。

今どれだけの財産があるのか

自分の資産を把握しましょう。
申立ての際には、陳述書に財産の状況を書いたり、財産目録を提出する必要があります。

財産となるのは、たとえば、現金、預金、不動産、自動車、バイク、賃貸マンションなどの敷金、保険の解約払戻金、会社などに勤めている場合は退職金見込額です。
動産も財産となりますが、通常、動産で財産として計上しなければならないのは、宝石や貴金属類、価値のある絵画などの芸術作品や骨董品、中古品として売却してそれなりの価格で売られる機械類などです。

このうち、退職金見込額は、現在、自分の勤め先を辞めたと仮定した場合に支給される退職金の額であり、その額の8分の1(裁判所によっては8分の1ではない場合もあります)が財産となります。
退職金見込額を調べるには、退職金規定がある場合にはそれをもとに計算すればよいのですが、こうした規定がない場合、勤務先に聞くしかありません。

不動産については、時価が財産の額となります。
裁判所によって、複数の不動産業者などの査定書を提出させる場合と、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて時価とする場合などがありますので、管轄裁判所に問い合わせて、その方式にしたがって査定してもらったり、固定資産税評価証明書を取得しておいたりする必要があります。

支払いをストップする

個人民事再生手続を弁護士に委任した場合や司法書士に(認定司法書士)に個人民事再生の書類作成を依頼した場合には、通常、弁護士や司法書士が受任(受託)した段階で債権者への支払いをストップしています。
自分自身で申し立てる場合、再生手続開始決定後に債権者に弁済することは禁止されますので、遅くとも開始決定前に支払いをストップしなければなりません。

銀行振込やATMを利用して支払っている場合には、それをやめればよいのですが、銀行などの自動引落を利用している場合には、残高不足にしておくなどして引き落とされないようにしておかなければなりません。
また、勤め先などから借入れがあって、給与天引きで支払っている場合、それを中止するよう依頼しなければなりません。

具体的な申立書類について

申立てにあたり必要な書類には以下のものがあります。
特に、債権者一覧表は、債権者が債権届をしなければ一覧表に記載した額が債権額となるので提出する際には確認しましょう。

  1. 再生開始申立書
    申立書の申立人欄には、氏名、生年月日、年齢、住所を記載します。
    氏名は戸籍どおり、住所は住民票どおりに記載してください。
    申立人が事業主の場合には、営業所も併記することになります。
    また、連絡先の電話番号・FAX番号も記載します
  2. 陳述書
    債務者の職業や収入、生活の状況、財産の状況、負債の状況などについて記載します。
    職業や収入については、現在の職業についた時期や月収、ボーナスの有無・金額支給時期などを、生活の状況については、家族構成や現在の居住が持ち家か賃貸マンション・アパートなどなのか記載します。
    なお、別途として過去1年間の資金繰り実績表と今後6か月間の資金繰り表と財産の状況を示すものとして財産目録を添付します。
    また、負債の状況について、債権者一覧表を添付します。
  3. 家計全体の状況
    申立前2〜3か月間の家計の収支を記載します。
    何か月分必要かは管轄の裁判所によって異なることもありますので、事前に問い合わせておいたほうがよいでしょう。
    なお、この書類に他の書類と矛盾する記載がある場合(たとえば自動車やバイクを持っていないのに申立人本人のガソリン代の支出がある場合)は、表の中に注記したり、または上申書にその理由を書いたりする必要があります。
  4. 添付書類一覧表
    戸籍謄本や住民票、源泉徴収票、給与明細書といった添付書類の一覧表です。
    添付書類一覧表は、単に提出のために作るというだけでなく、必要な書類がそろっているかどうかを自分でチェックするためにも役立つといえます。

主な申立書類

  • 再生手続開始申立書
  • 陳述書
  • 資金繰り表
  • 家計全体の状況
  • 財産目録
  • 添付書類一覧表

必要な書類の部数や費用について

申立書や陳述書、家計全体の状況、添付書類一覧表、そして添付書類は、通常2通ずつを裁判所に提出します。
これは、再生委員が選任される可能性があるからです。
明らかに再生委員が選任されないという場合には、1通ずつでもよいかもしれませんが、これについては事前に管轄裁判所に確認したほうがよいでしょう。
債権者一覧表は、裁判所用・再生委員のほか、債権者用として債権者の数だけ必要です。

添付書類を2通ずつ提出する場合、通常、1通は原本、1通はコピーで大丈夫ですが、裁判所によっては特定の書類について2通とも原本を要求する場合もありますので、これも事前に確認しておきましょう。
添付書類の中には2通ともコピーを提出すればよいものもあります。
そのほか、裁判所から債権者に書類を送る際の封筒に貼る、債権者の住所を記載したタックシールを提出するように求められることもあります。

申立時には、申立印紙代1万円が必要です(申立書に印紙を貼って納めます)。
通常、申立時に裁判所から債権者に書類を送るための切手を納めます。
切手は何円切手を何枚納めるかは裁判所によって異なりますので、問い合わせてください。

また、申立て後ほどなく官報公告(債権者などに再生計画の決定があったことを知らせるための公告)のための予納金を納めなければなりません。
これは通常、1万2000円程度であり、現金で納入します。
その後、再生委員が選任された場合には、再生委員の報酬を予納します。
その金額や支払方法(分割払いか一括払いか)は裁判所によって異なります。

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